IEEE ISMAR 2024 / ACM VRST 2023

他者アバターの外見・役割がプロテウス効果にもたらす影響

隣にいるアバターが、自分の役割を書き換える

プロテウス効果の研究の多くは「自分のアバター」だけを操作変数にしてきた。では、隣にいる他者のアバターの見た目や役割が変わると、自分の行動や自己認識はどう変わるのか。2本の実験研究から明らかにしました。

アバターの外見が使用者自身の態度や行動を変える現象は「プロテウス効果」として知られ、多くの研究は「自分のアバター」だけを操作変数にしてきました。しかし現実のVR空間では、自分の隣に他者のアバターがいる状況がほとんどです。他者アバターの見た目や役割が、自分の行動や自己認識にどう作用するのかを調べた2本の実験研究をまとめて紹介します。

背景

役割理論によれば、人は他者から期待される社会的役割を取り入れ、内面化します。VR空間でも、自分と相補的な特徴を持つ他者アバターと一緒に行動することで、その役割期待が自己イメージや行動に影響するのではないか。また、同調・差異化の心理学的知見から、他者のアバターと自分のアバターの外見が「同じ」か「違う」かによっても、行動が変わるのではないか。これらを実証的に検証しました。

リサーチクエスチョン

  • 自己アバターと他者アバターの役割・外見が相補的であることは、自己イメージや行動変容にどう影響するか(IEEE ISMAR 2024)。
  • 他者アバターとの外見の均一性・差異性は、共同作業(太鼓演奏)における身体運動にどう影響するか(VRST 2023)。

研究の方法

いずれも、参加者とノンプレイヤーキャラクター(NPC)のアバターが同じVR空間内で共同のタスクに取り組む実験デザインです。1本目では「戦士」と「魔女」のような相補的な能力を持つ協力型VRアクションゲームを、2本目では「スーツ」または「法被」を着たアバターで太鼓を一緒に演奏するタスクを用いました。

わかったこと

相補的な役割を持つアバターの組み合わせは、参加者個人の特性との交互作用によって自己イメージや行動に有意な変化をもたらす一方、役割の組み合わせがうまく機能しない場合には予期しない変化のリスクも見つかりました。太鼓演奏の実験では、アバター外見の均一性・差異性とアバターの種類の両方が、演奏時の腕の振りの速さと振幅に影響することがわかりました。これらの成果は、複数ユーザーが多様なアバターで交流するメタバース空間の設計に示唆を与えています。